DXをはじめるその前に——業務の見える化はできてますか?
こんにちは。大阪を拠点に、中小企業向けのIT導入・DX支援コンサルティング、研修講師をしている中小企業診断士の片上拓也と申します。
このnoteでは、中小企業が「仕事を楽にする」「組織を強くする」ために使える話を、現場の経験をもとに書いていきます。
「何でもできる」システムは存在しません
中小企業のDX支援をしていると、こんな声をよく聞きます。
「システムを入れたけど、思っていたのと全然違った」 「結局、現場では使われていない」 「導入したのに、業務がラクにならなかった」
なぜこういうことが起きるのか。長年IT業界にいた経験から、その構造をお伝えしたいと思います。
IT業界に根付いた「風呂敷営業」の問題
IT業界には、こんな商談の進め方があります。
顧客の業務を深く把握しないまま、システムの機能名だけを並べて「これもできます、あれもできます」と説明する。顧客は機能の名前を聞いて「それがあれば解決できそうだ」とイメージを膨らませる。そのまま受注に至る——。
これがいわゆる「風呂敷を広げる」営業です。
私がIT業界に入った2004年ごろ、こういったスタイルは珍しくありませんでした。営業が風呂敷を広げて受注してきて、あとは開発部門に丸投げ。現場に入った技術者が初めてお客様に会い、「さあ、何をどう作りますか」という状態から始まる、ということが実際にありました。
もちろん今はそういった会社は減っています。ただ構造的な問題は、形を変えて残り続けています。
「同じ機能名」でも、中身は全然違う
たとえば「販売管理」のシステムがあります。
食品を扱う会社の販売管理と、建築資材を扱う会社の販売管理は、同じ名前でも求められることがまったく違います。取引先との商慣習、納品や値引きのルール、請求のタイミング、在庫管理の考え方——業界や取引先の違いによって、業務の細部は大きく異なります。
ところが「販売管理ができます」という説明を聞いた経営者は、自社の業務がそのまま動くイメージを持ちやすい。そのギャップが、導入後のトラブルや「思っていたのと違う」につながります。
DX失敗の本当の原因
ツールや機能の問題ではありません。
**「現状の業務が見えていないまま、システムを選んでいること」**が根本的な原因です。
パッケージシステムにはそれぞれ「得意な業務の型」があります。自社の業務をきちんと可視化した上で、パッケージの型に業務を合わせていくのか、それともカスタマイズ開発で自社に合わせるのかを判断する。この順番が逆になると、どんな良いシステムを入れても現場には定着しません。
現状業務の可視化なしに、ツール選定から入ってしまうDXは、ほぼ失敗します。
では、何から始めればいいか
まず必要なのは、「今の業務を整理すること」です。
誰が、何を、どの順番でやっているか。どこに無駄があって、どこがボトルネックになっているか。それが見えて初めて、「どのツールが合うか」「どこをカスタマイズすべきか」の判断ができます。
この作業は、現場の人間だけでやると「今のやり方が正しい」という前提で進みがちです。また、IT業者に任せっきりにすると、業務の実態が見えないまま機能の話になりがちです。
経営の視点と現場の視点、そしてITの知識を持った第三者が関わることで、はじめて業務とシステムのズレを正しく把握できます。
おわりに
私がIT導入・DX支援で一番大切にしているのは、「ツールより先に業務を見る」ことです。
これは、IT業界に入る前に営業職として業務の現場を経験し、その後基幹業務システム導入の現場で「風呂敷をたたんでいく」仕事を長年やってきた経験から来ています。
「DXを検討しているけど、何から手をつければいいかわからない」という方、組織開発について相談したい、研修や講師の依頼を検討したいという方は、お気軽にお問い合わせください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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