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個社別DX研修レポート第2回

個社別DX研修 実施レポート第2回|「時間がない」の正体をなぜなぜ分析で掘る

自治体主催の「個社別DXリーダー人材育成研修」(全3回)の実施レポート、第2回です。第1回「インプットと現状分析」では、業務フロー図と業務一覧表を自分の手で書くところまでを行いました。今回はそれを出発点に、課題を発見し、深掘りするフェーズです。

私は中小企業診断士として、また公的支援機関で経営相談を受ける立場から、日々中小企業の業務改善のご相談に関わっています。その経験から言えるのは、課題は現場の人がいちばんよく知っているということ。ただし、それを「解決できる形」に構造化するには型が要ります。第2回は、その型を使う回でした。


宿題の業務一覧から見えた「二度手間」

第1回で作成した業務一覧を持ち寄り、まず全員で眺めるところから始めました。すると、象徴的な業務が浮かび上がってきます。発注に関わる業務で、Excelで作った内容をFAXで送り、さらに同じ内容をWebの画面に転記するという流れが日常的に行われていたのです。

同じ情報を3回扱う、典型的な二度手間(この場合は三度手間です)。ほかにも、仕入れ・買付のやり方が特定のベテランにしか分からない属人化や、在庫の数が帳簿と現物で合わないという在庫管理の悩みも出てきました。どれも多くの中小企業に共通する、現場のリアルな課題です。

大事なのは、これらが「業務一覧を書いたから見えた」という点です。頭の中にあるうちは、二度手間も属人化も「いつもの仕事」に溶け込んでいて、課題として認識されません。


課題発見の型①──ムリ・ムダ・ムラの3つの視点

課題を洗い出す最初の型は、製造業の現場改善で昔から使われてきた「ムリ・ムダ・ムラ」です。

  • ムリ:人や設備に過度な負担がかかっている(特定の人に業務が集中している 等)
  • ムダ:価値を生まない作業がある(転記、探し物、二重チェック 等)
  • ムラ:日や人によって、やり方や品質がばらつく(担当者ごとに手順が違う 等)

この3つの視点で業務一覧を見直すと、「なんとなく大変」だった仕事が、「これはムダ」「これはムリ」と名前のついた課題に変わります。名前がつくと、対策を考えられるようになります。


課題発見の型②──なぜなぜ分析で「時間がない」の正体を掘る

もう1つの型が「なぜなぜ分析」です。1つの困りごとに対して「なぜ?」を繰り返し、根本原因までさかのぼる手法です。

研修で印象的だったのは、「改善に取り組む時間がない」という声を掘り下げたときのことです。なぜ時間がないのか。早朝から仕入れがあるから。なぜその時間なのか。市場や取引先との商習慣で決まっているから。なぜ当日にバタバタするのか。当日注文という業界の慣行があり、配送も渋滞を避ける時間の制約があるから──。

掘っていくと、課題の根っこが自社の中ではなく、業界の商習慣や時間の制約にあることが見えてきました。ここまで掘れると、打ち手の考え方が変わります。変えられない制約(商習慣そのもの)と、変えられる部分(制約の中での自社の段取りや情報の流れ)を切り分けて、変えられる部分に集中すればよいのです。「時間がないから無理」で止まっていた議論が、一歩前に進んだ瞬間でした。


同業他社の事例とツール研究──ただし、まだ選ばない

課題が見えてきたところで、同業の中小企業5社の改善事例を紹介し、あわせて世の中の主要な業務ツールも研究しました。受発注のTANOMU、在庫管理のzaico、コミュニケーションのLINE WORKS、業務アプリを自分で作れるkintoneなどです。

ここで意識したのは、この段階ではまだツールを選ばないことです。目的は「候補と相場観を知る」ことまで。課題の優先順位が決まる前にツールを決めると、ツールに業務を合わせる本末転倒が起きがちです。ITベンダー側に20年いた経験から言うと、システム導入の失敗の多くはこの順番の逆転から始まります。


第2回を終えて──課題は現場が知っている。ただし「型」が要る

第2回を通じて感じたのは、やはり現場の皆さんは課題をよく知っている、ということです。講師の役割は課題を教えることではなく、ムリ・ムダ・ムラやなぜなぜ分析といった型を渡して、頭の中にある違和感を「解決できる形」に構造化するお手伝いをすることでした。

自社で今日から試すなら、現場の困りごとを1つ選んで、「なぜ?」を5回繰り返してみてください。3回目あたりから、いつもの説明では出てこない根本原因が顔を出します。

次回はいよいよ最終回。ここまで整理した課題に対して解決策を立案し、生成AIの活用も含めた行動計画に落とし込みます。続きは第3回「解決策の立案と行動計画」のレポートをご覧ください。

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