大阪を拠点に、中小企業向けのIT導入・DX支援コンサルティング、研修講師をしている中小企業診断士の片上拓也と申します。
月1〜2回のペースで続けている伴走支援(1社に対して複数回、各回2時間のセッションを重ねていくスタイルの支援)を、準備から当日、そして次回の準備まで、生成AI(Claude)と組んで回すようにしています。今回は、その具体的な運用ルールを共有します。noteに書いた記事の詳細版の位置づけです。
伴走支援で負荷がかかるのは「セッション本編」より「前後の作業」
複数回にわたる伴走支援でいちばん負荷がかかるのは、実はセッション本編そのものより前後の作業です。
- 前回までの議論を思い出しながら、今回のアジェンダを組み立てる
- 話し合う論点を、当日いきなりではなく事前にある程度作り込んでおく
- 説明用の資料(スライドや一覧表)を用意する
- セッションが終わったら、決まったこと・決まらなかったこと・次回への宿題を整理する
- 社内の記録用に、経緯を記録として残す
1回だけならまだしも、これが5回、6回と積み重なってくると、過去の経緯を思い出すコストがどんどん重くなっていきます。ここを生成AIと組んで回すようにしてから、負荷のかかり方が明確に変わりました。
生成AIを組み込んだ運用フロー(6つの工程)
伴走支援の一連の流れは、だいたい次の6つの工程に整理できます。ポイントは「セッション当日〜翌日」と「セッション数日前〜前日」の2つのフェーズに分けて考えることです。
セッション当日〜翌日
1. 議事メモ作成
会議の録音・文字起こしから、決定事項・課題・次回宿題を抽出します。「会話の中で宿題っぽく出てきたもの」と「今回の支援メニューでは扱わない長期的な課題」を明確に分けて記録するのがポイントです。
2. 引き継ぎ資料への反映
支援先ごとに「これを読めば経緯が全部分かる」引き継ぎ資料を一つだけ持つようにしていて、議事メモの内容をここに反映します。同じ役割のファイルを複数持つと、どちらが正か分からなくなるため、正本は必ず一つに絞っています。
3. 次回セッションの構成を決める
議事メモと引き継ぎ資料への反映が終わった、その勢いで次回セッションのおおまかな構成まで決めてしまいます。記憶が新しいうちに骨子を固めておく方が、結果的に手間が少なく済みます。議事メモ作成にかかる時間が短縮できた分、次回の論点の作り込みに時間を割けるようになったのは、想像以上に大きな変化でした。
セッション数日前〜前日
4. 直前の見直し・補足の反映、論点の確認
次回セッションの数日前になったら、決めておいた構成をあらためて見直します。支援先から追加の宿題や補足情報が届いていれば、そのタイミングで反映します。あわせて、論点を一人で温めておく作業もここで行います。「どちらの方向に倒すか自分の中でまだ決まっていない」という状態のまま壁打ち相手にできるのが生成AIの良いところで、セッションに臨む前に、論点の分かれ道や矛盾しそうな箇所を洗い出しておけます。
5. 資料の一括作成
論点が固まったら、スライドや一覧表を一気に作ります。できあがった資料は、セッション当日を待たずに事前に支援先へ送るようにしています。
6. 最終確認
資料ができたら、必ずスライドを画像化して一枚一枚目視確認し、セッションに臨む前に修正します。文字化けやレイアウト崩れは、作ってみないと分からないことが多いためです。資料作成にかかる時間そのものが短くなったことで、4〜6のサイクルを何度も回しやすくなりました。
現場で効いた運用ルール
資料デザインを固定化しておく
イメージカラー・フォント・絵文字は使わない、といった細かいルールを毎回指示し直すのではなく、あらかじめ決め事として持たせておきます。資料作成のたびに同じ調整をやり直す手間がなくなり、仕上がりのブレも減ります。
AIに顧客固有の情報を持たせない設計にする
型としてまとめる際、あえてAI側には企業名・製品名・過去の決定事項といった固有情報を持たせない設計にしました。固有情報は必ず引き継ぎ資料の側から読みに行かせる形にしています。型そのものは支援先が変わっても使い回したいため、固有情報を型の中に混ぜてしまうと、別の支援先に流用するたびに書き換えが必要になり、結局「型」として機能しなくなるためです。
今回の支援で扱わない課題の切り分け
セッションの中では、今回の支援メニューの範囲を超えた課題が話題に上ることもよくあります。それを「次回の宿題」と一緒くたにしてしまうと、次回のアジェンダを組むときにノイズになります。「今回扱う宿題」と「支援の範囲では扱わない長期課題」を、その都度きちんと仕分けて記録しておくことが、複数回にわたる支援を混乱なく進めるコツです。
よくある質問
Q. 生成AIを伴走支援に使うと、情報漏洩のリスクはありませんか?
A. 型(運用フロー)そのものには企業名・製品名・決定事項などの固有情報を持たせていません。固有情報は引き継ぎ資料側からその都度読み込ませる設計にしており、AIに直接記憶させることはありません。あわせて、生成AIは有料版・法人版を利用し、利用規約でデータが学習に使われない設定になっているかを確認したうえで使うようにしています。個人情報や機密情報そのものを入力しないことも基本です。企業・組織で利用する場合は、それぞれの組織のポリシーに従ってご利用ください。
Q. Claude以外の生成AIでも同じ運用はできますか?
A. 工程を型化し、固有情報と切り離して運用するという考え方自体は、ツールを問わず応用できます。当社ではClaudeを使っていますが、他の生成AIサービスでも同様の運用は可能です。
Q. 導入にあたって、大掛かりなシステム準備は必要ですか?
A. 大掛かりなシステム導入は不要です。議事録・資料のテンプレート、資料デザインのルール(イメージカラーやフォントなど)をあらかじめ決めておくと、運用がスムーズになります。
Q. どんな企業に向いていますか?
A. 専門家派遣・伴走支援を受けている企業や、複数回にわたる継続的なプロジェクトを回している中小企業、DX担当者が一人で情報を抱えがちな組織に向いています。
まとめ
伴走支援の「準備・当日・振り返り・次回への引き継ぎ」という一連の流れは、地味な作業の積み重ねでできています。ここを生成AIと組んで回すようにしてから変わったのは、作業スピードだけでなく、支援先ごとの経緯を混乱なく記録・共有できるようになったことです。
同じように複数回・継続型の支援やプロジェクトを回している方には、何かしら参考になる部分があるのではと思います。