Claudeの業務活用については、企画から作り込みまでを担う「3つの顔」として別記事でご紹介しました。一方で私は、GeminiやChatGPTといった他の生成AIも、実務の中で役割を分けながら併用しています。ChatGPTやGeminiを導入したものの、「メールの文面作成」や「簡単な要約」といった単発の使い方で止まっている、という方は少なくありません。私は中小企業診断士として、また公的支援機関で経営相談を受ける立場から、日々の実務に複数の生成AIツールを組み込んで使っています。
この記事では、この1年間Geminiを実務で使い込むなかでたどり着いた、チャットとNotebookLMという「点」と「面」の使い分け、そして実務で使う以上避けて通れないセキュリティの考え方を、実例を交えてご紹介します。Claudeとの役割分担が気になる方は、「Claudeの3つの顔」の使い分けもあわせてご覧ください。
「点」の使い方 ― チャットはトラブルをその場で瞬時に解決する
チャット形式のAI(GeminiやChatGPTなど)は、スピードが命の「トラブル解決」や「短期決戦の壁打ち」に向いています。1つの問いに1つの答えを返す、”点”の使い方です。
事例①:スプレッドシートの関数エラーを1秒で特定
=if(A1=A2,"●","×") でエラーを返すスプレッドシート。AIに見せると、ダブルクォーテーションが全角(” ”)になっていることを一瞬で見抜き、半角に修正したコードを返してくれます。エラーメッセージで検索するより、はるかに速く解決できます。
事例②:受託者の立場で行う契約書のリーガルレビュー
提示されたNDAや業務委託契約書に対して、「外部パートナー(受託者)の立場でレビューしてほしい」と前提を明確に伝えるだけで、無制限の損害賠償や、際限なく続く守秘義務といった実務上のリスクを瞬時に洗い出してくれます。専門家に相談する前の「一次フィルター」として、かなりの効果があります。複数の生成AIを使って内容を比較して検討するのも、いい使い方だと思っています。
「面」の使い方 ― NotebookLMは知見を蓄積する「外部脳」
一方でNotebookLMは、チャットでは流れていってしまう情報を「資産」としてストックし、いつでも横断検索・構造化できる「外部脳」として活用しています。
用途①:セミナーの知見をまるごとストック化する
複数回にわたるセミナーのレジュメや文字起こしを、すべて読み込ませます。過去の自分の知見が1か所につながっているため、「あのときのあの話」をいつでも引き出せます。さらに「このテーマとあのテーマを掛け合わせた提案を作って」といった、知見の掛け合わせによる新しい発想も生まれます。
用途②:海外の一次情報を、翻訳を挟まず理解する
海外の技術レポートやDXトレンド資料をそのまま読み込ませます。翻訳という工程をスキップし、日本語で「日本の中小企業に当てはめると、どんな示唆があるか」と問いかけるだけで、コンサルティングコンテンツの材料になります。
用途③:案件固有の文脈を理解した伴走支援
ヒアリングの議事録や、複雑な補助金申請の要件をまとめたフォルダを読み込ませます。一般論をAIに聞くのではなく、「この案件の、この状況で、何が課題か」を導き出す使い方です。煩雑な要件のチェックリスト化も、この方法だと一気に片付きます。
実務利用の絶対条件 ― セキュリティの壁をどう作るか
ここまでの活用はすべて、「セキュリティとプライバシーをどう担保するか」が前提にあって初めて成り立ちます。顧客の機密情報や経営データを扱う立場にとって、ここは生命線です。
私が実務でのAI利用に、法人向けの有料プラン(Google Workspace等)を強く推奨している理由は、まさに「AIの学習利用をコントロールできるかどうか」にあります。
- 無料版の落とし穴:無料版のAIツールは、入力した内容がAIの学習に使われる可能性があります。顧客のNDAや議事録をそのまま入力するのは、情報漏洩のリスクという意味で避けるべきです
- 法人向け環境の強み:有料の法人向けプランでは、入力データがAIの学習モデルの訓練に使われないよう保護(オプトアウト)されているのが一般的です。ただし、この点は利用規約やプランによって異なるため、実際に使う前に必ず自分の目で確認してください
- 「安全な環境」でしか実務は回さない:私自身、セミナーでも「業務利用なら有料版を」「個人情報・機密情報は直接入力しない」ことを繰り返しお伝えしています。組織のポリシーに従うことも含め、AIの能力を安心して引き出すための”ガードレール”づくりが欠かせません
まとめ ― 人が「意志」を持ち、AIに「作業」を任せる
AIが返してくる出力は、あくまで「70点の下書き」です。それを、人にしかできない「判断」「責任」「信頼関係の構築」によって100点に仕上げていくのが、これからのコンサルタント・士業の役割だと考えています。
- 点の解決:チャットで、トラブルや単発の相談をその場で片付ける
- 面の蓄積:NotebookLMで、知見と一次情報を「資産」として積み上げる
- セキュリティの壁:法人向けの安全な環境でしか、実務のデータは扱わない
道具の特性を理解し、適材適所で組み合わせる仕組みをつくれるかどうかが、これからの生成AI活用の分かれ目になると感じています。
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