「生成AIを業務で使っている」とはよく聞くようになりましたが、具体的に何に、どう使っているのかまで語られることは、意外と多くありません。
私は日ごろ、Anthropic社の生成AI「Claude(クロード)」を実務の主力として使っています。先日、この1年間の利用履歴を棚卸ししてみたところ、自分でも驚くほど幅広い業務に食い込んでいました。ホームページ制作、セミナー資料づくり、企業分析、補助金申請の支援、契約書のレビュー、議事録の作成——数えてみると、Chatだけで77件、それ以外の自律作業を含めるとさらに多くの案件でClaudeを動かしていました。
この記事では、中小企業診断士として、また公的支援機関で経営相談を受ける立場から、「生成AIを実務でここまで使い込むと、どういう使い分けになるのか」を、私自身の事例をもとにお伝えします。
そして棚卸しをして一番はっきり見えてきたのが、Claudeには使い方の異なる「3つの顔」があるという事実でした。本記事はその全体像を示す連載の第0回(ハブ)です。各業務の詳しい進め方は、続く各回で個別にご紹介していきます。
Claudeの「3つの顔」とは
同じClaudeでも、使う入り口によって、できることも向いている仕事もまったく違います。私が日常的に使い分けているのは、次の3つです。
| 顔 | ひとことで言うと | 向いている仕事 |
|---|---|---|
| Chat | 考えを整理する相棒 | 企画の壁打ち、レビュー、文字起こし、単発の変換作業 |
| Cowork | 調べ物を任せる助手 | Web調査、現状分析、情報の整理を「お任せ」する |
| Code | 作り込みと量産の職人 | Webサイト制作、アプリ開発、大量データの処理 |
順に説明します。
① Chat ― 考えを整理する相棒
いちばん馴染みのある、ブラウザやアプリで会話する使い方です。私の場合、これは「一人で悩む代わりに壁打ちする相手」として使っています。
- セミナーの企画を「こういう狙いで2時間の構成を組みたい」と相談する
- 契約書を貼り付けて「受託者の立場で気をつけるべき点は?」とレビューさせる
- 会議の録音を渡して文字起こし・要約させる
- PDFの表を「編集できるExcelにして」と変換させる
共通しているのは、1つのテーマがその場で完結することです。考えるための相棒であり、頭の中を言葉にして整理していく作業に向いています。私の履歴でも、全体の入り口はほぼここでした。
② Cowork ― 調べ物を任せる助手
Coworkは、Claudeに「自分で作業を進めてもらう」自律作業モードです。Chatが会話のキャッチボールなら、Coworkは指示を出して結果を待つイメージに近いです。
たとえば私は、自社で発信しているnote記事の現状分析をCoworkに任せたことがあります。「これまでの記事を読んで、傾向と改善点をまとめて」と指示すると、Claudeが自分で複数の記事を読みに行き、整理したレポートを返してくれます。
「調べる・読む・まとめる」という、手間はかかるが判断は明確な作業を丸ごと預けたいとき——ここでCoworkが効いてきます。
③ Code ― 作り込みと量産の職人
Codeは、パソコンの中のファイルを直接読み書きしながら、何十回・何百回という編集作業を淡々とこなす、いちばん本格的な使い方です。「エンジニア向けのツール」というイメージを持たれがちですが、私はデスクトップアプリ版を使っており、黒い画面(ターミナル)を自分で操作する必要はありません。プログラミングの専門知識がなくても、チャットで指示を出す延長で使い始められます。
実際、私の自社ホームページは、このCodeを使って作り込みました。1つの制作セッションで、Claudeとのやり取りは500回を超えていました。ほかにも、補助金業務で使う簡単な集計アプリの試作、会計データの重複チェック、大量ファイルの整理なども、Codeの担当です。
「考える」より「作る」フェーズ——ここがCodeの主戦場です。今この記事を読んでいただいているホームページそのものが、Codeでの作業の成果物です。エンジニアではない中小企業診断士の私でもここまでできる、という点は、非エンジニアの経営者・担当者の方にこそ知っていただきたいポイントです。
使い分けの原則:考える→調べる→作る
3つの顔は、対立するものではなく、業務の流れに沿ってバトンをつなぐ関係にあります。私の中では、だいたいこう整理しています。
- 考える・企画する → Chat
- 調べる・任せる → Cowork
- 作り込む・量産する → Code
そして実際の案件では、この3つがきれいにつながることがよくあります。典型的なのがホームページ制作でした。
- Chatで「どんなページ構成にするか」「受注につなげる導線をどう作るか」を壁打ちし、方針と引き継ぎメモをまとめる
- その方針をCodeに渡し、実際のページを何百回ものやり取りで作り込む
「Chatで考えて、Codeで作る」。この流れを覚えるだけで、生成AIの使い方は一段深くなります。
実務でここまで使える ― 連載でご紹介する事例
「3つの顔」を使い分けると、生成AIは”質問に答えてくれる便利ツール”の域を超えて、実務の相棒になります。この連載では、私が実際に取り組んだ業務を、進め方まで含めて具体的にご紹介していきます。
- 第1回:ホームページ制作編 ― Chatで企画し、Codeで作り込んだ一部始終
- 第2回:セミナー資料作成編 ― 企画から本番スライドまでをどう組み立てたか
- 第3回:企業分析編 ― コンサルの初回訪問前に、対象企業をどう調べ尽くすか
- 第4回:補助金申請支援編 ― 経営計画づくりの壁打ち相手としての使い方
いずれも、中小企業の現場でそのまま応用できる使い方です。公開次第、本記事からリンクしていきます。
安全に使うために ― 情報の扱いは最初に決めておく
ここまで「便利です」という話をしてきましたが、業務で生成AIを使う以上、情報の扱いのルールを先に決めておくことは欠かせません。私自身、使い始める前に次の点を自分なりに確認・整理しました。
- どこまでの情報を入力してよいかを線引きする。顧客の機密情報や個人情報は、扱いのルールを決めたうえで慎重に扱う
- API経由で使う場合のセキュリティを、Claude・その他の生成AIそれぞれについて整理しておく
- Anthropic社のデータ処理に関する規約(DPA)と、日本の個人情報保護法(外国にある第三者への提供を定めた第28条など)との関係を確認したうえで、運用ルールを決める
生成AIは、正しく設定し、入力する情報を管理すれば、中小企業でも十分に安全に活用できます。逆に、ここを曖昧にしたまま機密情報を入れてしまうことがいちばんのリスクです。「まず情報の扱いを決める」——これは、私が支援先にお伝えしているときも最初に強調している点です。
まとめ
1年分の利用履歴を棚卸しして、あらためて見えてきたのは、Claudeを「3つの顔」として使い分けているという事実でした。
- Chat:考えを整理する相棒(企画・レビュー・変換)
- Cowork:調べ物を任せる助手(調査・分析)
- Code:作り込みと量産の職人(制作・開発・データ処理)
そして、「Chatで考えて、Codeで作る」という流れを掴むと、生成AIは一気に実務の戦力になります。
次回からは、この使い分けを具体的な業務——ホームページ制作、セミナー資料、企業分析、補助金支援——に当てはめて、一つずつご紹介していきます。
「自社でも生成AIを業務に活かしたいが、何から手をつければいいか分からない」という方は、まず”どの仕事を、どの顔に任せるか”を整理するところから始めてみてください。その整理のお手伝いも、私たちの支援メニューの一つです。お気軽にご相談ください。
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